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「今日は何か発見できましたか?」
いつの間にか杏子が隣にいた。
「緑が紅葉してた」
僕は少し感動した事を杏子に話した。
「え?今頃気がついた?」
杏子は少し驚き、さらにクスクス笑う。
「笑うなって…仕事が忙しかったんだよ」
「またまた、仕事のせいですかぁ。まあいいか。では、他に発見したことは?」
「これは発見っていうか、兼ねてから気がついてたことがありまして」
「ふむふむ」
杏子の眼が真剣になる。 笑えた…
「いつもなんだけど、今日もまた、杏子の支度が遅い」
「何よそれ」
杏子が僕を睨む。2人で笑った。
僕は一浪の末大学に入った。もともと高校卒業後はプロサッカーチームに入団する予定でいた。が、引退後の僕の人生を悲観した父親がさっさとお断りしてしまったのだ。僕は怒った。荒れた。何より人生またとないチャンス、勿体無い!!結局僕は、父親と同じ建築家の道に進むこととなってしまった。言ってしまえば父親の思う壺………だった。
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