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オープンカフェで僕たちはいつものように、映画待ちをしていた。カップルの多い土曜日のカフェは賑やか。湿度低めの風は冬の始まりを手招きしていた。時折空からヒラヒラと落ちてくる葉が、少しの哀愁をつれて来る。
「杏子」
「ん?」
杏子が僕を見て微笑む。僕は、せっかく勢いで話そうとしていたことがその笑顔で苦笑いに、変身。
「なに?」
「いや、いや、忘れた。ごめん」
綺麗色した落ち葉たちは、カラカラカラとアスファルトとの競演を楽しんでいる。そして、杏子がうっすら何かを感じている……のを感じていた。女性の直感は、、、怖い。
「あの」
最初に口を開いたのは、直感の人、杏子。
「はい」
なぜか緊張していた僕。
「私せっかちだから言うね」
「あ、うん」
緊張していた僕。
「もしかして一緒に暮らそうとか言いたかった?」
杏子は僕が緊張して言い難かった事をあっけらかんと言ってのけたのだった。
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