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修は転職を自分で決めた。自分の仕事が忙しい事で、私達の関係がギクシャクしたと勝手に判断していたから……だから転職先を決めた修は何度も何度も私にこう言った。
「杏子と新しい場所で最初からやり直したい」
でも私は、一度もうなずくことが出来なかった。
修のことは、愛している。修と新しい生活を始めたい。ケニアで一緒に暮らしたい。
なのに......
私は、一度絵の具で塗ってしまった画用紙に新しい色を重ねても綺麗な色は出ない、そう思っていたのだ。それならとことん修に嫌われよう、いやそれしか思いつかなかったしそれが私達にとって最善の方法だとすら。
私はいつの間にか、修の悲しそうな顔しか見えなくなっていた。
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