プロローグ

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 プロローグ

「青だけの青空と、緑だけの草原。空からの戦闘機も、地上からの戦車も来ない場所。それだけで十分だ。その場所を飯のかわりにしてもいい。そこで俺は必死に働く自信はあるぜ」     内戦から逃れてきた15歳の少年は何か自慢でもするかのように僕を見上げそう言うと、どこで拾ってきたのか煙草を深く吸い込んだ。まだあどけなさが残る顔に日焼けした肌、いつも大人気取りな奴だが僕に見透かされていることも重々承知の上で話すところが可愛くもあった。  ケニアの大地で働いている僕は、日本のNPO団体の職員として今年1月からアフリカ大陸各地に学校を建設する事業に携わっていた。 「働いて働いて、金が貯まったら家族を持つんだ。そして更に働き続ける。金持ちになったら世界一平和な街へ家族と一緒に移住するんだ。それからはずっと家族とハッピーに暮らす。そうだ修、日本はどうなんだい?ハッピーに暮せる場所なのかい?」 「ハッピーに?」  僕は少年の言葉に詰まる。 「修は日本でハッピーな暮らしをしていたのか?」  少年は埃だらけの顔をして僕に聞く。 平和な日本が幸せな日本とは限らない。 幸せを掴み続けることは至難の業なのだ。  逃げるように日本からケニアへと来てしまった僕は、最終的にアルコール依存症と診断されることになってしまう…… そう、僕はハッピーに無縁の生活者になっていたのだ。 Are you happy ? この話は、平和な日本でハッピーに暮らす筈だった僕がたどった一年間の軌跡の物語である。  
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