1章 マライカ ② モンスターのささやき 

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1章 マライカ ② モンスターのささやき 

アルコール依存…… 僕の場合いつの間にかではない。   正確に言えば4月。突然日本へ渡り、結局トンボ帰りでケニアに戻る事になってしまったあの頃から始まったのだ。その日を境に僕の酒の量が増え始めたのは自覚している。元々酒がさほど強くない僕だった。なのに毎月の給料半分は、酒と煙草で消えていた。更に足らない時は、いつも支払ってくれる彼女がいた。  マライカ  僕より3つ年上。彼女とは、4月のあの日、ケニアの空港近くのバーで知り合いそのままずるずると付き合い始めた。  彼女は、僕にはもったいないぐらいの素敵な女性だった。 「修、いい加減にして!」 「これ以上飲んだらアンタ、酒と一緒にあの世行きよ!」  マライカから何度も何度も聞かされていたこの言葉。僕の部屋のリビンクに増え続けるビールの空き缶をかたずけながらマライカは僕にそう叱るのだ。まるで子供を叱る母親の様に。それでも僕は飲む量を減らすことが出来なかった。そしてマライカもまた、支払いを止めることが出来なかったのだ。    幸せの形は時と場合により変貌する。狂気の沙汰と寄り添うも時と場合に幸せと感じるらしい。僕はマライカに狂気じみた幸せを押し付けていただけだった。そしてマライカもまた、それを幸福と勘違いしていた。あの頃のマライカは、僕といる限り勘違いの幸福という魔法瓶に蓋をされ、そこで生きていくしかなかったのだ。
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