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「・・・という事で、明日はテストですから頑張ってください。」
「えーーー。」
いつも聞こえる、嘆きとため息。ほくそ笑む私。
事前に告知したとしても、同じ光景が広がるのは目に見えているだろう・・・。
テストという言葉にはそれだけの嫌悪感を招く力があるのだ。
「毎日復習していれば、何も困ることもないさ。」
学生時代に解き放たれた嫌味に満ちた言葉を、きっとそれを放った教師と同じ気持ちで教壇の上から発する日が来るとは思わなかった。教卓の上にある様々な物を片づける。
さあ、今日はここまでと遠くから聞こえるベルの音。差し込む陽の光にすがすがしさを感じる。汗をかいたようだ、シャワーを浴びたい。
暗く続く道。光の加減か、後ろを振り向いても今歩いてきた道はすでに見えなくなっている。手になじみのないランプは、どこで手に入れたのかもう忘れてしまった。しかし、今このランプを手放したら、暗闇に落ちていくことは間違いないだろう。遠くから聞こえるサイレンの音。上を見上げたら差し込む陽の光。
鳥の鳴き声が聞こえる。朝が来たのか。時計は6時を指していた。シャツを羽織ろう。
綺麗だ。息をのむほどに。言葉で表せないとはこのことなのだろう。何かを身にまとっている私が恥ずかしく思えた。この光景の元においては、何人も心が浄化されていくのだろう。さっきまで考えを支配していたものがくだらなく思えてきた。この安寧に身を任せ、ただただ身を委ねたかった。ただそれを許してもらえるもなく、容赦なく引き戻されるだろう。だからこそこの残されたわずかな時間は、まどろんでいたい。私の呼ぶ声が聞こえるまで。
幾千の夜を迎え、それと同じ数の朝を迎える。時に惰眠に溺れ、眠気に悪態をつきながらも見た夢の中の私ははたして「わたし」なのか。どこからか始まった物語も終わりを迎え、その名もなき「わたし」はその夢の中には確かに存在していて、忘却の中に消えて行ったのだ。夢というものの中で何かを生み出したのだとしたら、忘れていく過程でその「わたし」は死を迎え消えゆく。さて君は何人「きみ」を殺したんだい?
ただ言えるのは、「わたし」も「きみ」も殺した分だけ成長しているんだ。生きよう、本当の「死」が訪れるまで。
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