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河澄のこぐ自転車は風をきって走る。
流れていく景色はどんどんと変わっていく。
俺も河澄も髪の毛が風で後方にバサバサと流れる。
ごうごうに近い音が耳から聞こえる。風の音なんだろう。
失恋して、好きだった人間が他の女性を幸せそうにしているところを見ても、雨上がりの空は綺麗だし風は気持ちいい。
そんなものなんだろう。
思わず、河澄の肩を掴むてに力が入る。
「ご、ごめんっ!」
「平気だから、しっかり掴まっとけ。」
痛かったかもしれないのに、気にした風は無かった。
河澄が永田と全く似ても似つかないのもいいのかもしれない。
河澄といる時はあまり永田の事を思い出さない。
「着いたぞ。」
声をかけられて、改めてあたりを見回す。
小学校の時に社会科見学で来たことのある、博物館だった。
河澄と博物館繋がりが全くわからない組み合わせだ。
よろけながら地面に降りると、まだ足のあたりがふわふわとしている気がした。
無言で博物館の入口へ向かう河澄の後を追いかる。
ゆっくりと進む河澄は多分俺の事を待っていてくれたんだと思う。
何でわざわざこんな所へと思わないでもなかったがそれでも、二人で並んで博物館の自動ドアを通った。
了
お題:その後の二人
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