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「え? なに? は?」
言葉にならない言葉しか出てこない。
ここは博物館で、ただ二人で骨格標本を見ていただけの筈だった。
ああ。でも、キスってこんなに簡単にできてしまうものなんだって思った。
こんなに簡単に、恋人でもない河澄とキスができる。
初めてだったからそんな事も分からなかった。
一旦引っ込んだと思っていた涙がまた目に滲む。
「ふっ、ふふ。」
変な笑い声がこみ上げる。
「どうしたんだよ。」
笑い始めた俺に河澄は聞く。
「そっちこそ、なんでキスなんてするんだよ。」
どうしたって聞きたいのはこっちだとばかりに河澄に聞き返す。
「したかったから。」
「お前はキスがしたくなったら手当たり次第なのかよ。」
「まさか。」
じゃあ、なんでと聞こうとする前にもう一度、手を外されて口をふさがれる。口を話してすぐに至近距離で河澄と目があう。
「俺、キスなんかするの初めてだった。」
俺がそういうと、一瞬河澄の瞳が揺れる。それから「へえ。」と言ってまた唇を塞ぐ。
今度は舌が入って来て思わず逃げようと手で河澄を押すがびくともしない。
歯の裏を丁寧に舐められて固まる。
河澄の手が俺の頭を逃げられない様に掴む。
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