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何度か河澄の家はお邪魔したことがあった。
煙草臭いかと思った河澄の部屋はとても綺麗で驚いた記憶がある。
「さすがに、親の前で吸ってたら怒られるだろ。」
匂いで多分気が付かれてるとは思う。ばつが悪そうに河澄はそう言った。
でも、知っている。最近、河澄の煙草の本数が減っていることも、それが俺に気を使っているって事も。
恋人が自分の為に譲歩してくれることが嬉しかった。
あまり我儘になりすぎるのも怖かったけれど、口寂しかったらキスさせてといつもぶっきらぼうな河澄に似合わない事を言われて胸がぎゅっとしたのだ。
定位置になっているベッドの前のクッションに座る。
隣に河澄が座った。いつもより距離が近い気がするのは多分勘違いでは無いのだろう。
手慣れてるなとか、思わないわけじゃないし、河澄の過去に嫉妬わけじゃないけれど、河澄は今を俺にくれたのを知っているからそれで充分だった。
キスをしながら服を脱がされる。
服を脱いでしまったら、残るのは薄っぺらい男の体だ。
河澄が別にゲイじゃないってことは知っていた。
だから、いざ、俺の裸を見て気持ちが萎えてしまうかもしれないことが怖かった。
器用に服を脱がす河澄の手首を握って動きを止める。
手が小刻みに震えているのが分かる。
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