無いものねだり

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無いものねだり

※本編の雰囲気とかなり違う感じです。 セルフパロでは無いんですが、その位の気持ちで読んでくださる方のみどうぞ。 攻め視点。過去たくさんの、ザマア展開が見たいという声にお応えして。 河澄視点 あいつの元カレが誰だかは、付き合いだしてすぐに分かった。 一番こちらを見ている人間が誰だかなんて、少し注意していれば分かる。 実際のところ注意して観察することなんていらないだろうが。正に刺す様な視線っていうのはこういうものを言うんだろうと分かる。 クラスの人気者という顔をしたそいつの周りにはいつも人がいて、それから寄り添うように華奢な女子がいる。 人の評価は気になるし、友達も大切だし、皆で遊びたいし、大きな隠し事はしたくない。 それは普通の事だ。 可愛い恋人を周りに祝福されて、休み時間には人が自分のところに来て楽しく話を出来る。 絵にかいた様な幸せで、手放すのは多分きっと怖いのだろうと思う。 だからといって、こいつをぞんざいに扱ってよかった理由にはならない。まあ、ぞんざいに扱ってくれたからこそ今俺の隣にいる訳だが。 ふざけたみたいに、実際はただ愛情を込めて犬にするみたいに恋人の髪の毛をかき交ぜる。 「うわ、何するんだよ。」 髪の毛を直しながら言われる。 ますます、刺す様な視線が強くなった気がした。 振り向くと目があう。 ――バーカ 音に出さず唇だけで形を作ると、こちらまで歯がこすれる音がするんじゃないかって位歯を食いしばったのが分かった。 だけど、他の幸せで満足できる人間に、もうこいつを返してやるつもりは無い。 そうでなくても、やっと最近俺のことだけを見てくれるようになったと感じることが増えたのだ。 怖いものが多い人間は大変だろうが、知ったことでは無い。 「河澄どうした。」 「いや。……それより今度の日曜映画でも見に行くか。」 さすがに変な顔をしていたのだろう、元カレ君が周りから心配されて、笑顔を浮かべて取り繕っていた。 馬鹿だなあ。今度は声に出して言うと、最愛の人が不思議そうにこちらを見上げた。 END
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