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一言でいえば不良。
だが、すっと通った鼻筋、切れ長の目、男前という言葉を体現したようなその容貌は女子からも人気があった。
なぜ、そいつがこんなにも馴れ馴れしく俺の隣に座って、俺に話しかけているのかが分からない。
不良のたまり場だったのかと、今更あたりを見回すが誰もいない。
居るのは俺の横で、面白そうに笑う河澄だけだった。
「一本いいか?」
懐から取り出した煙草を一本俺に掲げる。
未成年がとか、学校でとか色々口をつきそうになったけれど、やめた。
何もかもが面倒だった。
何も言わないと、カチリとライターの音がして、それからうす灰色の煙が立ち上った。
ただ、その煙を見ていると、河澄がこちらを見た。
「こんなもん見て面白いのか?」
ふう、と煙をこちらに吹きかける。
それに眉をひそめたが、別に咳き込むほど煙たくはなかった。
少なくとも、教室であの二人を見ているよりは、面白いのかもしれない。
「まあ、それなりに。」
事実を伝えてやる様な仲ではないので適当に返すと、端から返事は期待していなかった様で「ふーん。」とだけ返ってきた。
別に、会話もなかったし、知り合いですらなかったが、何も聞かれないし普段の自分を知らない人間だというのは心地よかった。
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