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雨は潤色(うるみいろ)
相変わらず、昼は屋上で食べていた。
友達に「どうしたんだ。」と聞かれることはあったが、曖昧に濁していた。
元々、永田と週に1,2度一緒に飯を食べていたこともあり、それほど詮索はされなかった。
だけど、「彼女ができたんなら教えろよ。」と言われた言葉に勝手に傷つく。
友人には行って無いけれど恋人はいた。
それは過去系だった。
永田は小林さんと相変わらず一緒にいることが多かった。
河澄は来たり来なかったりとまちまちで、居たとしても大した会話もない。
けれども、その時間に救われていたことも確かだったのだ。
雨の日だった。
だから、いつもよりお昼休みの教室は人数も多かった。
クラスメイトの一人が永田達を茶化したのが発端だったと思う。
永田は小林さんを庇う様にして、それからこう言った。
「俺の大切な恋人に酷い事いわないでよ。」
何もかもが限界だと思った。
自分から別れようってメールを送ったのだ。
それなのに、馬鹿みたいだと思った。
だけど、どうしてもその場に居たく無くて、足早に教室を後にした。
あの時と同じだ。
ただ、自分は逃げ出す事しかできない。
だけど、どうすりゃよかったんだ。
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