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兎に角、走って走って、屋上に向かうための薄暗い階段まできてようやく足を止めた。
息はぜいぜいと乱れている。
見上げた屋上に向かうドアに寄りかかった河澄を見て、何かが崩壊してしまった。
堰を切ったように溢れ出る涙は止めることができず、ただただ嗚咽をこらえることで精一杯だった。
河澄は、きっとぎょっとしているだろう。
滲んだ視界ではよく見えない。
すると、ずかずかと歩を進めて手を引かれる。
階段を上り切った先の踊り場の様なスペースでまるで、他の全てのものから隔離するように抱きしめられた。
抱きしめられるというよりしまい込まれる様な感じだった。
それから母親が小さい子にするみたいに、背中をさすられた。
我慢していた嗚咽が止まらない。
河澄は何も聞かない。
聞かれたところでまともに会話ができる状態じゃないので、ありがたい。
ただ、ずっと馬鹿みたいに泣きじゃくる俺に付き合っていてくれる。
押し付けられた河澄の胸板から伝わる規則正しい心音に、段々と落ち着いてきた。
ヒックヒックと整わない息と、湿っぽい感触。
間違いなく河澄の制服は酷い状態だ。
体全体が、熱っぽくなっているのが分かる。
泣きすぎてぼーっとした頭では考えることもままならない。
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