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「ん……やっべぇ! 遅刻!」
俺は眠い目を擦り目覚まし時計のデジタル表示を見て、蒼くなった。脱皮みたいにその場にパジャマを脱ぎ捨てて、取り敢えず高校の制服に着替える。
髪を梳く間ももどかしく寝癖のまま、小さめのスニーカーの爪先を蹴って足を捻り込んだ。
「母さん! 何で起こしてくれなかったんだよ!」
ひと言文句を言ってから出ようとしたら、母さんがトーストを持ってきた。
「あらあら。朝食は食べないと、勉強も手に着かないでしょ」
「もぐぐ……」
更に文句を言おうと開いた口に、それが放り込まれる。
お陰で俺は、「いっけなーい! 遅刻遅刻!」と食パンをくわえて走る、少女漫画の主人公みたいな格好になってしまった。何が悲しくてこんな……。
だけど、遅刻ギリギリなのは確かで。全速力で走り出す。
角を曲がった所で、可愛い女の子と鉢合わせたら、本当に漫画だな。何処か皮肉っぽくそう思う。
――キキィッ!!
鋭いブレーキ音が軋んだ。しまった。女の子じゃなくって、自動車だった……。
* * *
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