お狐様の嫁入り

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 先頭の並んだ二人が、錫杖の様な、けれど透ける様に薄く白い布と七色に輝く金属で装飾された杖を規則正しく石階段に突き。  その二人に続いて、持てる程の大きさの楽器を奏でていたり、祝いの品を持ったりといった、同じ容姿の人物達が綺麗に二列になって、神社に向かって歩いて行く。  …その、あまりの美しさに。  現世ではとても見る事の出来ない、美しさに。  私の目と心は奪われ、身動き一つ取る事が出来なくなって。  …けれど。  他の人物達よりずっと豪華で煌びやかな婚礼装束を身に纏った男女が、私の横を通り過ぎるのを見て。  とても嬉しそうに微笑む女性の腰には、狐の尻尾が生えていなくて。  狐の面の奥にあるその瞳は、私がとても良く知っている色をしていて。  …姉さんだ。  そう判断した瞬間、  私は、  私は、  私は、 「姉さんを解放しろッ!お狐様…いや、この化け狐めッ!」  …私は猟銃を構えて、一団に割り込み、  男に、  …お狐様に、銃口を向けた。  銃口が震えて狙いが定まっていないのが、自分でも分かる。  そして、銃口を向けた瞬間に、周囲にいた狐の面達が私に矢じりを向けるのも、分かった。  …それでも、私は、銃口を逸らさない。  この銃口を、逸らしてしまったら。  …私は、二度と、  二度と、この願いを遂げる事は出来ないから。     
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