お狐様の嫁入り

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 姉さんを、取り返そうとしたんだっけ。 「……姉さん」 「どうしたの?」 「…………ごめん、なさい」 「…ミヒロ…?」 「ごめんなさい…ごめんなさい、姉さん。  私が…私があの時、あんな事を言わなければ、こんな事にはならなかったのに…!」  …ああ、そうだ。思い出した。  私はただ一言、謝りたかったんだ。  あの日。  姉さんが死んだ、あの日。  …私は姉さんに、大嫌いと言ってしまった。  本当に、本当に些細な事だった。  言った直後に後悔して、次に会ったら絶対に謝ろうと思えるぐらい、些細な事。  …けれど、姉さんは帰って来なかった。  そのまま、死んでしまったから。  だから、もし姉さんに、  奇跡が起きて、姉さんに会う事が出来たのなら、  謝りたかった。  謝りたかったんだ。 「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!  姉さんっ!ごめんなさ」  言い切る前に、言葉は遮られる。  …姉さんが、私を、  ぎゅうっと、ぎゅうーっと、抱しめてくれたから。 「…あたしも、馬鹿な妹を持ったもんだよ。  そんな事を…そんな事を言う為にこんな危ない真似なんかして…!」 「…ねえ、さん、泣いて、る…?」 「…泣いてなんか無いよ。  妹が危ない目に合うかもしれないって分かってるのに来てくれたんだ。     
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