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「何言ってんだよ、お前、何されたか分かってんのか?」
「大丈夫、私は大丈夫だから。大げさだよ」
そう言って笑って見せる。俺はそう言う、みーの身体を見た。細くて、華奢な身体が震えている。叩かれたところだろう、シャツから覗く腕が赤く腫れている。大丈夫なわけがないのになんでそんな嘘を吐くのか全く理解できないで俺は言葉を失う。
「皆には言ってなかったけど私たちちょっと前から付き合ってるんだよ。幸せなの。だから何があっても正志が気にすることなんてないから」
みーはそう続ける。それから、俺を抜かして仁礼さんに向き合った。
「ごめんなさい、私が悪かったの。勘違いさせるようなことしちゃって反省してる。ホント、すごく。でももう今日で最後だし、正志……君塚くんとは絶対に会わないから。絶対」
俺は振り返り仁礼さんを見た。その言葉に安心したのだろうか。一瞬顔がふわっと緩んだ。
「分かってくれたんだね、良かった」
ぞくり、鳥肌が立った。
「……君塚くん、みっともないところ見せて悪かったね、今日はもういいよ。タイムカードも定時で切っておくから着替えたらそのまま裏口から上がって」
「え……」
いつもの仁礼さんからつらつら出てくる言葉。二人から急に締め出された気分になる。なんで、そう言いたい気持ちを堪え俺は拳を握った。
「……お疲れ様でした」
無力だ。
そう感じながらも俺は背を向けて、もう二人を見ないようにしてバックに戻るのだった。
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