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あんなことがあったけれど、俺は翌日普通に出勤した。このまま逃げるのはどうかと思っていたし、きちんと終わらせたかった。
オープンのバリスタ……シフト上では一番早く、ペアが来るまでの一時間は一人作業だ。今までのバイト生活を振り返るにはちょうどいいシフトだった。それは俺が仁礼さんにお願いして組んでもらったものだったけれど、昨日のことがあったから、益々良かったと思った。
センサーが入っていない自動扉は重い。俺はぐっと力を込めて開けて入るとばっと店内を見渡した。きれいに整ったいつも通りの店内。ふと、仁礼さんが傘を叩いた場所あたりを見た。痕跡は全く無い。勿論、ひしゃげた傘もない。昨日の惨事がまるで嘘のようだった。そして、あの後、仁礼さんがまたみーに暴力を振るったとしても分からないなとも思った。
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