グッバイ・ワールド

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 目の前の通り、傘の数を数える。手前にひとつ、道路を挟んで奥にひとつ。それらがゆっくり進んでフレームアウトする。つまり、人通りはほとんどない。でも、人がいるのが奇跡みたいにも思えた。オフィス街平日夜九時、早まって夕方から降り続きどんどん強まる雨。  ふと、数ヶ月後の自分をイメージする。自分が会社帰り、こんな時間に帰宅なんてくたくたな状況でこんな大雨にあったら。頭の中、スーツの俺はエントランスを出てまっすぐ駅に向かう。だって、必要ない。カフェでまったりする意味がわからない。いくらくたびれてても……いや、くたびれたら余計に。下手に入ったら居心地の良さに帰りたくなくなるだけだし。さっさと帰って肩が濡れたスーツを干して、適当に飯を食って、シャワーをさっと浴びて早く寝てしまうのが一番。  誰だって同じような考えだろう。だから、今こうして客がひとりも無いのは当然なのだ。
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