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俺とみーは入りたての頃よくつるんでいた。その日も一緒に遊んでいて、仲のいいベテランの西野さんが「今日新店長が様子見に来るってよ」と、連絡をくれたから興味本位で店に寄ったのだ。
夕方、少し落ち着いた時間。俺とみーは入店するなりカウンターに向かった。西野さんは待ってましたとばかりににやりと笑った。
「今いる?」
「いるいる。バックで店長となんかしてるよ。来るかも、って言ったら楽しみって言ってた」
俺たちは顔を見合わせた。その時点でかなり好感度が高い。
「超気になる。どんな感じ?」
「男から見てもイケメンだし、俺たちにも感じ良かったよ」
「あれ、みーちゃんと正志じゃん。なんでいるの」
もう一人のシフトの加賀さんがひょこっと現れる。
「ちょっと一杯のみに」
「嘘うそ、普段来ないくせに。どうせ新店長のことでしょ」
「ばれました?」
「みーちゃんミーハーだもんなー。正志も大変だねえ」
「バック行ったら迷惑ですよね?」
「あんな狭いとこ四人も入れると思うか? ちょっと話したいだけだろ、今呼ぶから待ってな」
そう言って西野さんが裏へ入ろうとしたとき、奥からひょこっと顔が出た。まるでプレーリードッグとかそんな感じで。
「こんばんは」
その状態で、にっこりとそう挨拶してからカウンターに入る。そのコミカルとも言える一連に性格を感じた。緩やかな雰囲気のなか、俺たちはこんばんは、と口々に挨拶する。
「はじめまして、来月から配属になる仁礼です。えーと、君塚くんと小森さん?」
仁礼さんは俺たちの顔を順に見た。
「はい、小森美玲です。これからよろしくお願いします」
すぐに返るシャキンとした声。俺はぱっとみーを見た。視線がまっすぐ仁礼さんに向かっていた。瞳がきらきらと輝いていて、口元が緩く、柔らかい笑みを浮かべている。
その瞬間俺は、あ、終わったと感じたのだ。
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