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仁礼さんは、すごい。
今日だって、通常勤務からの本社会議で疲れてるだろうに直帰せず、「この天気じゃ売上が心配だから」なんてわざわざクローズ前に顔を出してくれる。店長の鑑だと思う。だから、安心してみーの背中を押すべきなんだ、でも。
俺は残りのもう一杯もくっ、と飲んでしまうとシンクに運び軽く流した。
……正直、まだみーに未練がある。
ちらり、とみーの様子を窺うと、そのまま清掃を始めていた。今は「普通」の「小森さん」な気がする。俺は自分の下心に気づかれていないことと、みーの調子が戻ったことにほっとする。
今、言ってしまおうか?
俺はごくりと唾を飲んだ。
告白、じゃない。さっき引っかかったこと。……突っ込んではいけないと警鐘は鳴っていた。でもみーとはこれで終わり。俺はみーを大事にしたい。そう思えば自然と口が開いた。
「……仁礼さんとなんかあった?」
原因は俺じゃない、でも就活で鬱とはまた違う気がする。じゃあ、と思い当たるのはそれくらいで。俺はじっとみーを見つめた。
「……何にもないよ」
ビンゴ。少しの間は返答に迷った証拠だ。何もないはずがない。俺は一歩前に踏み出した。
「あいつに何かされたのか?」
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