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尊敬してやまなかった仁礼さんを初めて疑った。あいつ呼ばわりなんて、今まで考えてもみなかったこと。でも、セクハラ、パワハラ……社会的に許されないこと。それをもし、皆には見えないようにみーにしていたら……。いや、目を逸してたから気づけなかったのかもしれない。もし本当にそうだったら、と想像したら裏切られた気持ちになった。
「何にもない、何もないって。なんで正志が人の関係に入ってくんの」
「心配だからだよ」
「心配するようなことないって。いきなり何? 今まで気にしてなかったじゃん。連絡だってしてこなかったくせに。突然昔みたいに呼ぶし、今日の正志変だよ」
「お前が明らかにおかしかったからだよ。他の人にも言えないんだろ? 抱えてんならぶちまけちゃえよ、どうせ俺辞めるし」
「何もないってば、いいの、何もないの。私幸せだから。幸せなの、放っといて!」
「放っとけるかよ……好きなんだよ」
勢いで告白。しまった、と思った瞬間、みーが固まる。そして、震える声で言った。
「……今更何? 本当に止めてよ……」
出てしまったものはしょうがない。俺はきちんと気持ちを伝えようと思った。
「なあ、みー。俺、お前のこと本当はまだ……」
俺はみーの腕を掴んだ。抵抗するかと思ったけど、みーは動かないままだ。
「止めてよ、遅いよ……」
――遅い?
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