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あの人がいなくなった神社に、今日も願う人が来る。
おねがいします、おねがいしますと。
ここにはもう、神様なんていないのに。
ほら、また1人。
お前は、何を願いに来た?
「かみさま。かみさまのおかげで、おばあちゃん、元気になりました。本当に、ありがとうございました!」
……あ。
“ありがとう”
その言葉と、その笑顔を見た瞬間に、体を巡る暖かい何か。
そうか、あんたが言っていたのは、このことか。
ようやく、わかりましたよ。
田舎の山奥の小さな神社。
ここに、俺にとっての、かつての神様はいないけど。
今は、俺が神様らしいから。
だから今日も、加護を、祈りを。
愛しき人間達に、幸せが訪れますように――
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