優しいかみさま

3/8
前へ
/8ページ
次へ
「神様、おばあちゃんの病気が治りますように」 「神様、どうか雨を降らせて下さい」 「かみさま、明日のテストで良い点取らせて下さい」 まったく。こいつらは、神は万能かなんかと勘違いしてんのか? テストくらいは自力でどうにかしろよ……。 思い思いの願いをしていく参拝客に、俺は少しイラついていた。 「ふふ、私には少し難しいね。けれど、加護があらんことを、祈ろうか」 でも、俺の隣のこの人は、穏やかに笑っては加護を授ける。願いを叶えることは出来ないけど、少しでも力になれるようにと、己の身を削っている。 ふわふわして真っ白な髪の毛。透き通った肌。優しく輝くきんいろの瞳。 田舎の山奥の、あまり大きくない神社だけれど、ここには美しい神様がいる。 「あんたは、優しすぎますよ」 「そんなことないよ」 ふわりと微笑むあんた。死にかけた俺を拾って、神使にしてくれたあんた。俺は、あんたのために、何が出来るだろうか。 「君は、何か願いはないのかい。不自由してたりしないのかい」 「大丈夫ですよ」 そうだ。俺まであんたに何かを乞うだなんて、絶対にしない。もう充分に与えてもらったから。だから、俺はあんたの力になりたい。望みはただそれだけだ。 けれど、俺には、力がない。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加