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「神様、おばあちゃんの病気が治りますように」
「神様、どうか雨を降らせて下さい」
「かみさま、明日のテストで良い点取らせて下さい」
まったく。こいつらは、神は万能かなんかと勘違いしてんのか? テストくらいは自力でどうにかしろよ……。
思い思いの願いをしていく参拝客に、俺は少しイラついていた。
「ふふ、私には少し難しいね。けれど、加護があらんことを、祈ろうか」
でも、俺の隣のこの人は、穏やかに笑っては加護を授ける。願いを叶えることは出来ないけど、少しでも力になれるようにと、己の身を削っている。
ふわふわして真っ白な髪の毛。透き通った肌。優しく輝くきんいろの瞳。
田舎の山奥の、あまり大きくない神社だけれど、ここには美しい神様がいる。
「あんたは、優しすぎますよ」
「そんなことないよ」
ふわりと微笑むあんた。死にかけた俺を拾って、神使にしてくれたあんた。俺は、あんたのために、何が出来るだろうか。
「君は、何か願いはないのかい。不自由してたりしないのかい」
「大丈夫ですよ」
そうだ。俺まであんたに何かを乞うだなんて、絶対にしない。もう充分に与えてもらったから。だから、俺はあんたの力になりたい。望みはただそれだけだ。
けれど、俺には、力がない。
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