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私は一人で教会に通うようになりました。そして何度も何度も、神に問いました。「何故父を選んだのか」と。どれだけ問い、祈っても、答えは返って来ませんでした。
そんな日々が続いていた、ある日の事です。教会から帰ると、家に見知らぬ若い男性が来ていました。男性は細身で背が高く、色白で真っ黒な髪色に、整った顔立ちをしていました。とても美しいと思いました。まるで天使のようだと。しかし、身に着けている服は真っ黒な礼服でした。黒い天使と言う言葉が、頭の中に浮かびました。ソファーに座り、紅茶を啜る姿は、とても優雅でした。
私の姿に気付くと、母は「こちらへいらっしゃい」と、ソファーに座るよう促しました。私は言われるままに、ソファーに座り、目の前で紅茶を啜る男性に、軽く会釈をしました。すると男性は、優しい笑みを浮かべ、同じく軽く会釈をしてきました。
「こちらが、さっき話していた娘ですよ。」
母がそう言うと、男性は「なる程」と何かを納得した様子で、私に向けて手を差し出し、握手を求めてきました。
「初めまして、お嬢さん。」
男性の声はとても甘く、もし耳元で囁かれたら、きっと溶けてしまうだろうと思いました。
私は差し出された手を軽く握り、握手をすると、その手はとても冷たかった事を覚えています。
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