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「ここが高峰市か」
青年が大きめのリュックサックと大きなケージを手にこの東京西側に位置する町に着いたのは盆も終わり、空が秋の模様に替わり始めた頃だった
青年はグルリと辺りを見回す
なかなかの長身と男性にしては長めの髪
整った顔立ちをしているが何処か垢抜けない雰囲気を醸している
「なぁ、公俊ここが俺たちが仕事していく町なのかよ?」
ホームのベンチに腰をおろした時、声はケージの中から聞こえた
「聞いてたよりでけぇ町じゃん」
「バカ!まだ話しかけんな」
公俊と呼ばれた青年は小声で注意する
「誰かに聞かれたらどうすんだ」
ケージの中の毛玉がモコモコと体勢をかえて小窓から辺りの様子を見回す
「大丈夫ずら、田舎じゃないんだし誰も気にしやしねぇさ」
毛玉の言うとおり彼らの前を行き過ぎる人はこちらの様子を気にする事なく歩き去る
「それでも注意しなきゃいけないだろ」
「ほぅけ」
毛玉は再び体勢をかえてお尻を向け丸くなる
「ここからはバスに乗って、村が用意くれているはずの社に行く」
毛玉は返事代わりに尻尾を一回振った
〚許された者だけが入る事ができる樹海の結界内に妖かしの存在を護るための人間が住まう村が存在する
その村がどうして出来たのか
いつからあるのか
誰も知らない〛
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