妖しの護

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でもそれは相手が善側である前提という条件付きだ 「その沙耶については俺ら、ちゃんとする」 「当たり前ぇだ、いざとなりゃあ忘れ葉の実を無理矢理でも飲ませるぐれぇしろ」 「・・・・・・」 唇を噛む公俊に、双葉は説教をおさめた 「海ん坊、助けろ」 「うん」 よっと腰を上げ、廊下に出る双葉が夜空を見上げると、もうほとんど丸くなってきた月が正面に見える 「海ん坊の迎えに呼ぶ海坊主は満潮にならんと浜に近付けねぇ、猶予はねぇ」 そう言うと双葉は庭におりた 公俊も双葉に続く 「次の満月までは待てねぇかんな」 「双葉、俺らは」 「信じて良いな?」 眼をそらせない厳しさは応援だ しっかりと公俊が首肯くのを見るとニヤリと笑い宙に浮き、消えた 後にはサワサワと草木を抜ける風の音だけになり、妙に耳に触れる 人の生活圏から離された自然の中、公俊は各地に散っている他の護達を思った 自分達よりもはるかに厄介な案件をそれぞれの相棒の妖かしと共にこなしているのだろう 海ん坊を無事にのちの海坊主にさせる 直輝にも全てを受けいれてもらって・・・ 自分達に割り振らざるを得なかった仕事くらい、やり遂げなくては それも、自分達らしく     
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