再会

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「クナール、少し提案があるのだが」  ローブを着終えたアブノバは、片手を上げることで侍女たちを下がらせた後、そうクナールに声をかけてきた。「何か」と、クナールが静かに応えれば、アブノバは数歩こちらに近づいて来て。ちらりとラミに視線を向け、またクナールの方へと戻した。 「もう一人、護衛として共に控える者を連れて行きたい」  静かで、しかし有無を言わせない声音。主としての言葉。真っ直ぐに向けられた視線に、クナールもまたそれを受け止める。  「何故ですか」と、彼は呟いた。 「ラミ嬢がいれば十分でしょう。彼女は絶対に陛下をお守りいたします。陛下のお立場を相手に悟らせないためにも、護衛は最低限の人数の方が良い」  「お判りでしょう」と、クナールはどこか咎めるように言う。おそらくは、その件はすでに話し合っていた事柄なのだろう。けれど。  アブノバは静かに首を振った。「私もそう考えていた」と、彼は呟いた。 「だが、ふと思ったのだ。確かに二百年前の時点で、魔物はその存在が生まれた、当初の気性の荒さを克服し、理性をある程度取り戻していたというが……。今は、どうなっているのか、と。更に二百年の時が経った今、彼らは本来の理性を取り戻しているのか、あるいは」  「元々の気性の荒さが戻ってはいないか、と」。  ぼそりと、アブノバそう続ける。それに対し、考える素振りを見せたのはクナールの方で。「確かに、一理あります」と、彼は頷いた。 「私たち人間と魔物は、この二百年の間、接触が有りませんでした。もちろん、ロギの塔で白の魔法使いが言葉を交わすことは出来ましたが……。理性を持った一部の者がロギの塔の者と話しており、魔物の世界全体で見ると、気性の荒い者たちが争いをしている、ということも有り得ないとはいえない。今回のように目の前に私たちが現れ、その上戦を仕掛けようと言うならば、理性のない魔物達が手当たり次第に攻撃をしてこないとも限らない……」  僅かに眉間に皺を寄せて、クナールは自らの考えを口に上らせる。アブノバは静かに、それに頷き、「そういうことだ」と呟いた。 「魔物の現状が分からない今、警戒をするに越したことはない。ラミは確かに私を護ってくれるだろう。……その身を呈してでも」  言い、アブノバはその首元を手で触れる。そこには、ラミの首元にある物と良く似たネックレスが二つ、襟元から見えていて。
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