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「……さすがに早かったな」
聖域にあるいつもの小屋を訪れたウートは、一人そう呟いて笑ってしまった。
昼食後、すぐに訪れたのだから、早いのは当たり前である。気が逸ってしまって仕方なかったのだ。
ラミ、ラミ。早く来てくれ。
心の中で、彼女の名を呼んだ。早く、早くと、心が騒ぐ。
やっと見つけたのだ。世界を繋ぐ方法を。彼女と共に在る未来を。その希望を。だから。
「……早く来てくれ。ラミ」
私の愛しい人。
彼女が現れるはずの窓を見ながら、ウートは一人、彼女の姿を待った。
彼女が来たら何と伝えよう。まずはちゃんと、礼を言わなければ。彼女のおかげで見つかったのだから。
いつもいつも、彼女には助けらていると、ぼんやりと思う。
出会ったその当初から、ずっと。そして、だからこそ。
……私は、彼女のいない未来など、考えられないんだ。
「傍にいるのは、彼女だけで良い」
そう、思うのだから。
いつもの席に腰掛けて、何もせずにただ時間が過ぎていく。
待って、待って。ずっと待って。
いつも彼女が来ている時間を、少しずつ過ぎて行く。
日が傾き、辺りが真っ赤に染まる。しかし次第にそれも収まって、だんだんと薄暗く
なって来て。
「……ラミ?」
暗くなるまで、ウートはそこにいた。こんなことは、初めてだった。
……何故来ない?ラミ……。
ウートはただ呆然と、窓の向こうを見ていた。それでも彼女は、来なかった。
……何か、用が出来たのだろう。
彼女に限って、何も言わずに姿を見せないなどということは、考えられなかったから。けれど。
次の五日目も、その次の五日目も、彼女が小屋を訪れることは、なかった。
……それ以来、彼女が小屋を訪れることは、なくなった。
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