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ひっきりなしに来る同級生からのメッセージに応えるように、勇生はどんどん書き込みをエスカレートさせていった。
_あいつは何も反省してない。
_オレの勝ち決まった。 みんな、ありがとう!
書き込みは益々エスカレートし学校、食事、睡眠以外の時間を全て書き込みに費やし、そのたびに送られてくる友達からの反応に気持ちが昂った。
そしてLINEのみならずTwitterやサラハも駆使して勇生は書き込みを続け、徹底的に彼女を追い詰め続けた。
_正しいのは、俺たちだ!
_俺のこの2か月を返せ!
_お前なんか、ひとりになれ
_学校から出ていけ! あの男と一緒になっ!
_ あぁ、今でも思い出しちゃう・・・なんで、オレってこんなに一途?
一週間もしないうちに、書き込みは数百回に及んだ。
ネット上は彼女に対しての抗議の書き込みと誹謗中傷の言葉で溢れた。
そして、とうとう彼女は学校に来なくなった。
それでも勇生が、書き込みの手を緩めることはなかった。
__この程度で許されると思うな!
__学校やめろ
しかし、彼女が学校を休んだことで状況は一変した。
事情を知った彼女の親が学校へ来たのだ。
そして、彼女が最初に休んでから二日後。
勇生は母親と共に学校に呼び出しを受けた。
理事長室でこれまでに勇生がしてきた書き込みのコピーと共に、停学を言い渡されたのだ。
ネット上での誹謗中傷は学校の罰則のど真ん中に引っ掛かり、事と次第によっては刑罰の対象にもなると言われ、隣ですすり泣く母親の声がやけに苛立たしく感じた。
家に戻った勇生はすぐさま自分の部屋に籠りスマホを手に書き込みをした。
_俺が停学っておかしくね?
_意味わかんないんだけど、罰を受けるなら向こうだろ。
_刑罰?上等だよ!
そしていつものように、友達からの反応を待ったのだ。
しかし、いつまで待ってもスマホはうんともすんともいわない。
「え?なんで?いつもなら書き込むと同時に来てたのに・・・」
徐々に陽が陰っていく部屋の中で明かりもつけないまま、ただならないスマホの画面を眺めていた。
完全に陽が落ちて真っ暗になった部屋の中、勇生はふっと鼻で笑った。
「そうかよ・・・・」
無気力にスマホを放ると、そのままベッドに倒れこんだ。
__ぁあ・・・もうやだ・・・最悪だ。どうして俺がこんな目にあうんだ。停学?ふざけるな・・・悪いのはどう考えてもあの女じゃないか・・・
ぁ~あ・・・生きてても全然面白くないな、別にもう死んでもいいや・・・
***
馴染みの食堂をでると利夫は、基地に向かいひとり歩いていた。
ふと・・・足元に紙切れが落ちていることに気づく。
紙切れが落ちていたからといって、別段珍しくもないのだがこの時ばかりは妙に気になった。
一旦は通り過ぎたものの、踵を返し利夫は紙切れを拾い上げた。
ついていた泥を丁寧に払いのけると、そこになにやら文字が書いてある。
『生きてても全然面白くないな、別にもう死んでもいいや』
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