#1 王子と鈍感と腹黒

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「おはようございまーす…」 「空!お、おはよう」 「あ、ケンゴさん。ざす」 「あれ、空来たんだ」 「長谷さん!おはようございますっ」  いや、ケンゴさんに対して適当かよ。でも先輩方は皆、空に(ほだ)されてるからなあ…。特にケンゴさんはゾッコンって感じ?あの人もちょろいな~。 「長谷さん相変わらず腰細いっスね」 「これから太くなるし」 「ええ?デブんないで下さいよ」 「筋肉だよ!」 「はは、相変わらず煌生(こうき)は長谷大好きだな」 「そっスよ。俺、長谷さん愛してるんで」 「なっ…お前はまたそういうこと!」 「ははっ!愛されてんなあ~長谷」  ストレッチついでに抱きつく。周りの先輩方に冷やかされても気にしない。長谷さんには殴られたけど。 「長谷さんキャッチボールしよ」 「タメ口使うな。空、キャッチボール頼む」 「えっ、いいんですか?わーい、お願いします!」 「あっちょっと長谷さん!先誘ったの俺ですよ!!」 「おーい、ちゃんとストレッチしろよ~」  そんな感じで今日もわちゃわちゃ練習開始。この自由でゆる~い部内の雰囲気が、俺は結構気に入ってる。 ☆   ☆   ☆  部活の休憩時間。飲み物を取りに行くと、空と鉢合わせた。 「ん」 「なんだ、こーきか」 「何だってなんだよ。つうかお前、先輩方の前と態度違いすぎ」 「だってこーきにはバレてんだから、作る必要ないでしょ」  コイツは先輩とか同期とか関係なく愛想を売りまくっているが、入部してすぐに空の本性に気がついた俺は、それを指摘した。それから空は俺の前ではキャラを作らなくなった。 「まあ俺としてはその方が話しやすくていいけど。男にぶりっ子されてもキモいだけだし」 「たしかにー。でもみーんな俺のことかわいい!って褒めてくれるよ?」 「かわいいって…お前それでいいの?」 「別に、お陰さまで可愛がってもらって得ばっかりですぅ」 「計算高っ」 「こーきだって女子に王子~って呼ばれてんじゃん。全然王子ってキャラじゃないクセに」 「あれは勝手に…!」 「あっ長谷さんお疲れ様です!」  あっくそ出遅れた!でも負けねぇ。 「長谷さんっ、今日一緒に帰りましょう!」  長谷さんは、誰にも渡さない!
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