カミサマ

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カミサマ

「神様!」 タケルは叫んだ。 「タケル。どうした?」 母が覗き込む。 「かーちゃん!」 タケルも母を覗き込む。 7年前に母は認知症の診断を受けた。 診断から半年後に姉が急死し、母の症状は一気に進行した。 そして母は一人暮らしだった。 その頃から行政の力を借りることを選択し、デイサービスに通い出した。 タケルも週の半分を実家で過ごす毎日に。 タケルの生活も一変した。 そして5年の見守り生活が過ぎ、「もうここまで。無理だ。」 母を施設に送り出した。 「かーちゃん。かーちゃん。」 母を求めて、自分を責めて、現実を飲み込んで、ガブガブ…ガブガブ飲み込んで… 朝から何度も母と過ごした子供の頃を思い出していた。 50のオレはどんな息子だったのかな? 名前を呼んでくれない母を前に拝むように問いを吐く。 そんな時、そいつはやって来た。 ここぞとばかりにやって来た。 天使の薬…「カミサマ」 認知症特効薬 効果の程を確認する前に、奪い合うようにその薬の処方箋を欲しがった。 行政の判断する要介護レベルを基準に、具体的な症状を加味し、且つ処方による回復見込みがあると判断されたアルツハイマー型認知症患者から優先的に処方箋だ出された。     
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