神様になろう!

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「えー? なんで? 私は猫好きなのに」  案の定、彼女は顔を顰めた。むくれた顔も憎めない。  そう反応されるのはわかっていたので、理由を説明する。 「ほら、猫嫌いにも色々あるからさ。猫のことをあまり知らないから嫌いっていう人もいると思うんだよね。そういう人に、猫好きの観点から助言してあげる神様ってこと」  猫の習性などを教えてあげれば、行動に理解ができて苦手意識も薄まるかもしれない。  僕の説明を受け、思い至ることがあるのか悠木さんは考え込んだ。 「純粋に猫が嫌いって人もいるだろうけど、そういう人からは猫を遠ざけてあげればいいんじゃないかな?」 「ああ……それはいいかも! 嫌いな人と猫が会えないようにすれば、不幸な事件も起きなくなるし!」 「色々助言した結果、猫嫌いさんが猫好きさんに変わるとか、猫嫌いと遭遇しなくなって猫が安全になるとか。そう考えたらやりがいありそうじゃない?」  実際、猫嫌いの神様が神様として認められるのかどうかはわからないけど、たぶん行けると思う。この国はなんでも神様にしてしまうから。  悠木さんは勢いよく走り出した。 「こうしちゃいられない! ちょっと申請出してみるね!」  確か『猫嫌いの神様』は神様名簿に記載がなかったから、まだ誰にも登録されていないはずだった。でもいつ誰が登録を出すかはわからないから、早い者勝ちなのだ。 「がんばってね、悠木さん」  もうちょとよく考えた方が、と言おうかと思ったけど、悠木さんが楽しそうだからいいかなと余計な水は差さないでおいた。  結論として、彼女は無事に猫嫌いの神様になった。  彼女は神様らしく、アレルギーで猫嫌いだった人の体質を治してあげたり、糞などに悩まされて猫嫌いになっていた人に協力し、その人が猫の被害を受けないようにしたり、様々な形で猫嫌いを猫好きに転向させたりして、忙しくしているようだった。  猫好きの神様とも仲良くやってるそうだ。  ただ、猫嫌いの人が猫好きになった結果、その人には神様として干渉できなくなって、会いにくくなるのが少し寂しい、と言っていたけど。  基本的には、楽しくやってるみたいだ。  さて、僕は何の神様になろうかな。
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