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次の朝、駅の改札をでたところで、電話しながら走ってきたおじさんと肩がぶつかった。思わず声を上げそうなほど痛かったけど、おじさんはじろりとこちらをにらんでそのまま通り過ぎようとした。腹が立ったけどどうしようもないので、歩き出そうとすると、後ろでおじさんが声を上げた。
「あいた!」
恐る恐る振り向くと、昨日の重田さんと同じように、おじさんが左足を上げてけんけんしていた。今度もやっぱり、神様の目からおじさんの足にむかって、黄色いビームが伸びていた。一瞬胸がすく思いがしたけど、さすがにやり過ぎだと思ったので、そんなことはしなくていいとやんわりと伝えた。
それからも、分かったのか分からなかったのか、神様は相も変わらず私にいやなことがあると、相手を次々とビームで攻撃し続けた。パン屋さんのレジで順番抜かしをした大学生、コンビニで最後の一個のみかんヨーグルトを横取りしていったおばさん……
「あいた!」
みんな、コメディ映画みたいに大げさに痛がるので、私はちょっとくらい嫌なことがあっても気にならなくなった。
だけど、ある日。私はやっぱりミスをして、課長に怒られた。それは全く私の不注意で返す言葉もなかった。
「まあ、今回は早めに気がついて大事に至らなかったからいい教訓として、次からは気を……あいた!」
気がついたときには遅かった。課長はしゃがみ込んで、左足の小指を押さえていた。振り返ってみるまでもなく神様がビームを出しているに違いなかった。
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