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「はぁ……。もう、死にたい」
女は池の前のベンチにガクッと腰掛け、ぼーっと景色を眺めてたのだけれど、大きな茶色の瞳からこれまた大きな涙がひと粒、またひと粒、ぽろ、ぽろ、と、こぼれた。
池にはこんこんと湧き水が流れ、極めて透明度の高い水だけに池の底がはっきり見えた。透き通った水に小魚が数匹群れ、女の気持ちと裏腹にすいすい進んだ。大きな柳の木の葉がそっと右に靡き少しだけ風で波打った池に溶けるように映った。
ああ。どうやらこの女は失恋したらしい。僕は池の縁でのんびり日向ぼっこしてたんだけれど、つっと哀しい気を背に浴びせられた。
「この気持ちは、いただけないな」僕は水の中へぽちゃんと入った。
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