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物心ついたころ、佳代子はなぜ、自分だけがこんな仕打ちを受けるのかと悲しんだ。それを母親に話すと、ごめんねとしか言わず、理由を話してくれない。
その理由を知るのは、この年の冬になる。その日は雪が降り積もり、あたりは一面銀世界であった。佳代子は、その日、日が昇るとともに目を覚まし、家族のものはまだ寝静まっていた。佳代子はチャンスだと思った。
そっと家を抜け出して、言いつけを破り、家の外に出たのだ。外の世界は、佳代子にとって見るものすべてが新しく、まだ踏みしめられていない、雪の道を走った。すると、遠くから、佳代子と同じくらいの子供がじっとこちらを見つめていた。男の子だ。
佳代子はその男の子と、すぐに打ち解けて友達になり、雪だるまを作って遊んだり、鬼ごっこをして遊んだりした。佳代子にとっては、兄以外の子供と初めて遊んだ、楽しい思い出となった。
家に戻ると、母親が鬼の形相で玄関で待っており、いきなり佳代子は頬を打たれ、なぜ言いつけを破ったのかと責め立てた。佳代子は泣きながら、謝った。母親の顔を見ると、青ざめており、母を心配させてしまったことを、佳代子は心から後悔したが、今日の日は、佳代子にとって一生の宝となった。
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