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「無茶を言うな。子供5人連れて、そんなのすぐに村人にバレて連れ戻されてしまう。もしかしたら、俺たち、みんな闇に葬られてしまうかもしれないんだぞ?」
「何のために!今まで、佳代子を隠し続けたと思ってるのよ!山の神に捧げられないようにするためじゃない。」
佳代子はその時に、幼いながらもすべてを悟った。
私は、山の神にささげられる?
佳代子は足に力が入らなくなった。
ふらふらと自分の布団に戻ると、その言葉の意味することに恐ろしくて震えた。
「佳代子」
息を殺して、一番上の兄の吾作が佳代子の布団に近づいてきた。
お兄ちゃんと言おうとすると、吾作は人差し指を口に当てると、しーと言う口をした。
足音を立てずに、土間まで行くと、草履をはき、兄に手を引かれて、こっそりと引き戸をあけて外に出た。
「佳代子、逃げろ。」
引き戸をあけて、しばらく忍び足で歩くと、ようやく普通の声で吾作が佳代子に告げた。
「いやだよ、お兄ちゃんも来て。」
すると、吾作は佳代子の手を引くと、一緒に走った。
いけにえだとか、バカげてる。
この現代にそんなものがあってたまるか。
ていのいい口減らしじゃないか。
吾作は知っている。村が飢饉になるたびに、口減らしのため、山の神にささげるというおかしな理由をつけて、働き手にならない幼い女の子や、年寄りを山に捨てるのだ。
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