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私が神様だ!
昔々あるところに神様がおりました。
神様は、遊び心で自分に似た姿の人間を作りました。
また神様は、自分に一層そっくりになるように人間に心と言葉を与えました。
それから、神様にとっては一瞬、人間にとっては永遠とも思える時間が過ぎた頃、人間の間で「神ってる」「神対応」という言葉が流行りました。
神様は、使者に神の付く言葉の意味を調べるように命じました。
使者は一週間ほどして神様の元に戻るとこう報告しました。
「私が一週間ほど下界で暮らして分かったことですが、“神ってる”はおそらく超人的、神がかりな状態を指すのでしょう。
“神対応”はおそらく寛大、親切な対応という意味でしょう」
この報告を聴くなり神様は怒りました。
「ふむ。“神ってる”はさておき、私は“神対応”が気に入らん。今すぐ、“神対応”という言葉を創造したものを連れてくるのだ!」
使者は5分もしないうちに一人の若い男を連れてきました。
「この者がそうです」
若者は怯えているというよりも、憐れなほど惚けた表情をしていました。
神様はそんな若者の前に仁王立ちになるとこう言いました。
「お前か。親切、寛大という意味で“神対応”という言葉を創造し広めたのは!
私は、決して寛大ではない。私は人間などよりもずっと自由であるべき存在なのだ!
お前たちに言わせれば、それは“わがまま”“理不尽”かも知れんが。
気に入らないとい理由だけで人間を無理やり呼び付け、こうして怒りをぶつけるのが私だ。私の妻も神の一人であるが、美しい人間の女には嫉妬をし私などよりも恐ろしい罰を与える。それが私たちだ。覚えておけ!
お前にも私から罰を与えよう。この世から“神対応”という言葉をお前がなくすのだ!」
段々と激情してくる神様を呆然と眺めていた若者は「はい」と慌てて答えると、使者によって下界に戻されました。
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