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障子紙を通して仄暗く明るい。 部屋に満ち始めていた弱い光が龍琉の瞼を震わせた。 外ではまだ雨がさあさあと降り続け、どこかでずっと滴り落ちる雨垂れの音がしている。 龍琉はけだるい心地よさの中でうっすらと目を開けた。 子守唄のような雨音に、龍琉の腕の中の水華の寝息が小さく重なっている。 きめ細やかな白磁のような水華の肌が見え、龍琉はそっと指先で肩のラインをなぞった。 起こさないように体を横向きに体勢を変えると、2人を覆っていた毛布が滑り落ちた。 癖でうつ伏せに眠る水華のむき出しの背中があらわになった。 目に飛び込んできたのは、真紅の花びらをもつ大輪の牡丹。 それを写したかのような痣が背中全体に蕾からほころびかけた姿で浮かんでいる。 艶やかな牡丹は、寝息をたてる水華の華奢な体がかすかに上下するたびに、花びらを震わせて、まさにホンモノのように見えた。 龍琉は銀色に光る目を細め、一瞬だけ、それを睨みつけるような視線をよこした。 でもすぐに愛しげな手つきで、そっと花びらを撫でた。 その手のひらが熱くなり、それだけでたまらなくなる。 背中に覆いかぶさるように龍琉は花びらに強く唇をおしあてた。     
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