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それに反応したかのように身じろいで、水華がうっすらと目を開けた。
雨の青い匂いが鼻孔をくすぐり、それから背中がうずいた。
「龍、琉」
あえぐように名前を呟くと、龍琉は水華から自分の身を離した。
ふいに体と体の間を通り抜けた空気に、水華がかすかに身を震わせた。
「もう五時だよ。夜があける」
毛布を引き寄せた龍琉の銀の瞳をぼうっとみやり、水華はまた目を閉じた。
耳に静かに外の音が響いてくる。
早朝の鳥達が鳴きかわさないのは、きっとまだ。
「まだ、雨の音がする」
「うん」
「一緒にいられるね」
「今日のは、まだ降るよ」
「じゃあまだ帰らなくてすむの?」
「うん」
「……じゃあ学校休んでずっと抱き合ってる」
水華の首筋に、冷たい唇が触れた。
「ダメだよ。学校は行かないと」
「……龍琉がいない学校なんてつまらない」
「そんなことないよ」
龍琉の言葉に、水華はかすかに眉をひそめ、不意に布団から体を起こした。
立ち上がった一糸まとわぬ肢体が不機嫌そうに窓に近づき、障子を開け放つ。
「私が学校で他の男といてもいいんだ?」
窓を濡らして落ちていく雨水の影が水華の白い体に寄生虫のようにまとわりつく。
身を起こした龍琉の銀の瞳がかすかに剣呑とした光を宿した。
窓ガラスに映ったその双眸を、水華は挑発するように見つめた。
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