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窓ガラスを挟んでかっちりと結びあった視線を外しもせず、龍琉は手近に落ちていた水華の着物をぞろりと羽織ると、水華の背後に立った。 「一緒にいてみれば?」 龍琉は鼻を鳴らすようにして苛立つように言葉を放った。 龍琉の体にもまた、流れる雨の影がのたうつ。 それはまるで呪いのように見えた。 「……その男を、食い殺してもいいならね」 銀の瞳がぎらりと光り、雨音が一段と激しくなった。 水華はぞくりと震えた胸の奥を隠して、口を閉ざした。 彼は脅しは言わない。 そうだと言うなら、間違いなくそうする。 でも、それが今の水華には、嬉しい。 そうしてくれたら、本当に、嬉しい。 水華は黙って、龍琉の体を這う雨の影を視線で追った。 少しずつ下へ落としていくと、龍琉の脇腹辺りに、青黒いものが見えた。 丸く大きな扇形のような。 「……鱗、増えたね」 「水華の牡丹も、また開いたよ」 龍琉の静かな言葉に、水華は龍琉の体から視線を外して窓の外を見つめた。 「あと、どれくらい……」 2人が2人でいる時間は残されているのだろう。 その言葉を飲みこんで、じっと窓を伝い落ちる雨の跡を見つめ、それから不意に窓を強く開け放った。 一気に風に煽られた雨が部屋の中になだれこむ。 冷たい水しぶきを全身に浴びた水華を、龍琉は白い着物を広げて背後から包み込んだ。     
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