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雨とともにやってきた転校生
朝から水華を見かけてはひそひそと交わされる言葉が、背中や頭や肩にひっそりと積もっていく。
無意識に左手首をなぞった。
悪意の重みに体が沈まないように、水華はしっかり前方を見据えて教室へ向かった。
騒がしい雰囲気がもれてくる教室の扉をあけた。
教室中の視線が一気に水華に集中する。
一瞬にしてしん、と静まり返り、悪意と好奇、そこにわずかに混じる畏敬とが教室を覆っていく。
水華はそれを無視して、無言で足を踏み入れた。
窓際の自分の席に座り、いつものようにカバンから教科書やノート、ワークをとりだす。
それらをしまおうとして、中がつかえるのに気づいた。
手を入れると、がさがさしたものに触れた。
誰かがクスクスと笑う声が聞こえた。
一気に気分がざらついて、その瞬間吐き気を催した。
眉間に力をいれてそれをぐっと抑え込むと、そのまま引き出しの中から掴んだものを引き抜いた。
ばさばさと落ちた、カッターで切りつけられ、ページが破り取られた教科書。
昨日、机の中に置き忘れていったものだった。
もはや教科書の体をなしていないほどにボロボロにされた物を拾い上げ、そのまま立って教室の後ろのゴミ箱に投げ捨てた。
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