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「雷神よ、ここの任務は終いじゃ。下がってよいぞ」
金烏とは社長の名代であり、いつも神々の業務について伝えるのが仕事である。
「承知いたしました」
「風神は残りの作業を頼む」
そう言うと金烏は再び金の渦となりどこかへ消えてしまった。
「はあ~残業つらー……」
風神は大きくため息を吐いた。
「悪いな、お先に」
「仕方ねえ。もう一暴れしてくるわ」
お疲れーと言いながら風神は力を溜め始めた。
それを見ることなく、雷神はバックヤードに入った。
扉を閉じた途端、ずるずると雷神は頽れた。
「あー……うっかり口を滑らすところだった。恥ずい」
顔を手で覆い、扉に頭を激しく数回打ち付けた。
実は雷神は風神との仕事が増えていることを少しうれしく感じていた。
「今日はたまたま二柱だけだったからな。正直、雨神さんがちょっとウザいなと思っていたけど結果的にストッパーになってくれていたのか……いや、そ―じゃなくて!」
困惑する頭をまた打ちつけた。痛みで冷静さが少し戻った。気持ちを落ち着かせようと雷神は大きく深呼吸をした。
外では風神が凄まじい力で地上に風を吹かせていた。
雷神は雲の隙間から地上を照らす太陽を見ながらポツリと呟いた。
「もう少し一緒にいたかったな」
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