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おじいちゃんの罪
おじいちゃんの後ろに変なものがいると気付いたのは今朝のことだ。
「どうしたの、それ?」
僕は声をひそめておじいちゃんに聞いてみたけど、何のことかわからないみたい。
あきらかに肩に手をかけられて、変なものにおんぶされてるのに、重くも苦しくもないようだった。
「このじじい、祟り殺してやる」
変なものは青黒い顔で僕をにらみつけ、地獄の底から響くような恐ろしい声でそう言った。
昨日おじいちゃんは、すいじん様の社を新しくするって言って、古いお社を壊してしまった。
「御魂うつさないであんなことして、罰当たるかもしれないよ」
おばあちゃんが心配して神主さんに電話しようとしたけど、おじいちゃんは大丈夫だと言い張って止めたのだ。
僕は直感的に、この変なものはすいじん様だと思った。
その夜から高熱で倒れたおじいちゃんは、救急車ではこばれて、そのまま入院してしまったけど、全然よくならなかった。
「お願いしますから、おじいちゃんを許してください。助けてください!」
僕は新しい御社に行って、すいじん様に祈った。
「だめだ」
変なもの……いや、すいじん様は薄汚れた着物で出てきた。相変わらず顔色が青黒くて、表情もおっかない。
「そもそも普段からわしをないがしろにして、ろくに祀りもしなかったではないか。そして此度の狼藉じゃ、とても許せるものでは無い」
「これから一生懸命お祀りしますから!」
僕は泣きながらお願いした。
おじいちゃんは、ちょっといいかげんでガンコなとこがあるけど、僕のことはとても可愛がってくれる。小さいころ用水路に落ちて流されたときも、ずぶ濡れで追いかけてきて助けてくれたのはおじいちゃんだ。
「仕方がない」
すいじん様は腕組みして、僕をじっとにらんだ。
「祖父を助ける代わりに、その身を捧げよ。しもべとなって、わしに仕えるのだ。何でも言うことを聞くのだぞ」
「はい!」
こうして、11歳のときから僕は、すいじん様のしもべになった。
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