カミサマ・サバイバル

3/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 とある住宅地の個人宅玄関先に、小さな鳥居と祠があった。  その二つは、この家の先代当主……といっても彼はそもそもその土地の生まれではなかったし、分家も分家の人だったのだが…が、夢でお告げがあったとかで、今から五十年ほど前に所有する敷地の中に建てたものだった。  普通、個人宅に建てられた神社というものは「分霊」により、他の大きな神社と繋がりをもつものだが、先代当主は「そんなことは夢には出てこなかった」と言う理屈でそういった事もせず、以前に近所の河原で拾った拳ほどの変わった形の石を、間に合わせの様に祀っていた。  それは何の来歴もない石だったが、先代当主が毎朝欠かさず酒や白飯を供えるうち、無名の神の依代となった(以下、他の神と区別するため、その神の呼称をカタカナで「カミサマ」とする)。  カミサマは若い上に、後ろ盾の全くない神だったので、神としての格は最低ランクだった。しかし、先代当主の信仰心は自己流にしろ本物ではあったので、世界神様協会の末席に列することとなり、神様ポイントも、信者は一人であったが、その一人がせっせと祠の補修や周辺の掃除や草刈りをしていてくれたおかげで、微々たるものではあったが少しづつ貯まっていった。  カミサマの状況が厳しいものとなったのは、先代当主が亡くなってからだった。現当主は先代の生前から、「親父の気まぐれと物好き」の象徴として冷たい目で鳥居と小祠を見ており、先代が無くなって後は、それらを取り壊すのも手間だと、雑草が生い茂った中に放置した。  そのような仕打ちを受けた場合、神Pが十分なそれなりに格の高い神であれば「祟り」というアクションを起こし、人々を畏れさせることもできたが、雀の涙の神Pしか持っていないカミサマには、そういったことは不可能だった。  それどころか、毎年、「神様税」としてとられていく分で、元々少ないカミサマの神Pは更に削られていき、カミサマは、もう神として存在していられるのは一年か二年…というところまできていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!