カミサマ・サバイバル

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 そんなカミサマに救いの手を差し伸べたのは、当主の娘だった。  彼女は、所謂「スピリチュアル女子」であった。そちらの方面に嵌り始めた時は、実家の敷地内にある崩れかけの祠など気にも留めず、ネット上で騒がれるパワースポットなどに行くばかりだったが、そのうち、「なんだ、こんな身近にパワースポット(らしきもの)があったじゃないか」ということで、カミサマの小祠や鳥居の周りの手入れをしてくれるようになった。彼女の手入れのお陰で、カミサマは少しづつではあるが、神Pを取り戻そうとしていた。  しかし、当主の一人娘のカミサマへの思い入れは、カミサマに更なる存在の危機を招くことになった。  当主の娘は、二十八歳になった。   適齢期を過ぎても結婚相手も探さず、神社仏閣巡りと実家の祠の手入ればかりをしている娘に、当主は度々苦言を呈するようになった。その事で親元で暮らすことが煩わしくなった娘は、実家を離れる事を考え始めた。  彼女がこの家を離れることは、カミサマにとって、この上もなく都合が悪かった。  現在、カミサマを信仰しているのは、当主の娘ただ一人であった。もし、彼女が家から居なくなってしまえば、他にカミサマの身の回りを整えてくれる者はおらず、そうなると、今度こそカミサマはその存在を失ってしまうことになるのだ。  カミサマは娘を引き留め、且つ、当主に自分の存在を認めてもらう為の手立てを考えた。
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