カミサマ・サバイバル

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 結局、これといった良案が思い浮かばなかったカミサマは、他の神にこの件を相談してみようと、久方ぶりに神様会に出席することにした。  神様会とは、定期的に行われる地域の神たちの会合…という名の飲み会であった。カミサマは最も下っ端の神で、神様会では他の神から軽く扱われることが多く、ここのところ、会合から大分足が遠のいていた。  しかし、カミサマは自分の小さなプライドに構っている状況ではないと、馬鹿にされようがなんだろうが、同業者たちに助言を求めてみようと思った。  会合が始まると、出される酒に口も付けず、カミサマは自分の近くいた神から順に、片っ端からアドパイスを求めた。  神たちは、「格下の神は大変だな」と他所事として流したり、「たった一人の人間次第の神って…ああ、ごめん、二人だったね。たったの」と嗤ったり、「そういった個人的な問題を神様会で相談するなんて、君には神としての節度ってものがないんだね」と軽蔑の表情を露わにしたりしたが、誰もカミサマにこれという解決策を示してはくれなかった。  がっかりしたカミサマは、一度気分転換してからまた他の神にも聞いてみようと、厠に行く為、一旦会場の外に出た。 カミサマがトイレへと向かう廊下を歩いていると、後ろから声を掛けられた。声の主は、カミサマが住んでいるところから三、四百メートル離れた旧家に祀られている神だった。  彼は、カミサマと同じ所謂「屋敷神」という、個人宅で祀られている神ではあったが、一人の人間の気まぐれにより戦後に生まれたカミサマとは違い、すくなくとも江戸時代以前から一族に祀られている、それなりの格がある神であった。  そんな神が遥かに格下の自分に何の用だとカミサマは思ったが、なんと、その神もカミサマと似たような状況なのだと語り出したのだった。
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