カミサマ・サバイバル

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 そうして、カミサマがした事といえば、当主の娘に朱印帳を落とさせただけだった。  しかも、それさえも実行したのは、より獲得している神Pが多く、ちょっとした悪戯であれば十分仕掛ける力がある旧家の神の方で、神Pが少なく、何もできないカミサマはそれを頼んだだけだった。  カミサマは、旧家が駅とカミサマの家の間に位置している事を知っていた。その条件を上手く使い、落とし物を介して二人を知り合わせようとしたのであった。  しかし、ただの落とし物ではだめだった。財布や定期券を落とさせたのでは、二人はお礼を言い言われ、それで終わってしまうだろう。二人の会話が型通りのもので終わらぬよう、朱印帳を落とさせたのだった。  計画の中で一番難しく思われたタイミングに関しても、休日、神社仏閣巡りをした帰りの娘に旧家の門前で朱印帳を落とさせることにより、その後、飼い犬を散歩させる為、門から出てきた旧家の次男に見つけさせるよう謀り、上手くいった。  次男は落ちていた朱印帳を警察に届け、落とし物を警察に問い合わせた娘は警察署でそれを受け取った。  カミサマの予想通り、その後娘は、直接お礼を言いに旧家を訪れ、そして次男と知り合った。考え方が似通った二人は意気投合し、その日話しただけでは話足らず、その後もちょくちょく二人で会うようになった。  その後は…カミサマたちが期待していた以上の早さで、二人の仲は進展した。  カミサマは思った。少ない神Pしか持っていないにも関わらず、ここまで見事な縁結びを成し遂げるとは、自分は選ばれし神なのではないのかと。  しかし、高くなったカミサマの鼻は、すぐにへし折られることになった。  二人が出会ってから三ヶ月。ある土曜日の昼間にカミサマの家に旧家の次男がやってきて、日付が変わろうとする深夜に帰って行った。家から出てきた次男の赤い顔を見て、酒好きの当主と相当飲んだであろうことをカミサマは察した。  結婚の挨拶が上手くいったのなら、お祝いに自分にもなにかいいものを供えてくれるのではとカミサマが期待していると、娘が清酒を供えにきてくれた。  その娘から、カミサマは思わぬ報告を聞いた。
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