カミサマ・サバイバル

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 カミサマは旧家の神の祠まで飛んでいき、その扉を激しく叩いた。カミサマがしばらくそうしていると、最初は居留守するつもりだった旧家の神は、五月蠅さに耐え兼ね、扉から顔を出した。 「なんですか?こんな遅い時間に」 「なんでもなにもありませんよ!話が違いますよ!話が!」  カミサマは上手く声量を調節することもできず、大きな震える声で言った。 「お宅の次男、うちに婿入りする筈だったんじゃないんですか!?なんです?長男が海外で知り合った女性と一緒になって現地で暮らすですって?あなたの家は次男が継いで、うちの娘がそちらの嫁になるってなんなんです?」 「ああ、そのことですか。私もつい最近、知りました。そうでした、まだ、ご報告はしていませんでしたね」  熱くなっているカミサマを尻目に、旧家の神様は呑気に欠伸をした。 「話が違うじゃないですか!私はあなたのトコの次男がうちの婿になってくれると思って、この計画を立てたんです」 「それは、残念でしたね」 「残念でしたねじゃないですよ!うちの娘がいなくなったら私、どうすればいいんですか!?ねぇ!?」  カミサマが旧家の神の袖に縋った瞬間、旧家の神の貌が変わった。 「大人しく聞いてやっていれば…離せ!下郎!」  旧家の神は、カミサマの手を振りほどくと言い放った。 「わたしがいつ、うちの男子をくれてやると貴様に約束した?身の程を知れ!貴様のような下賤な神を祀っている家の娘を貰ってやるんだ。貴様は有り難く思って然るべきだろう!無礼な奴め!去ね!二度とその顔をわたしの前に晒すんじゃない!!」  旧家の祠から強い風が吹き、カミサマは屋敷の門の外まで吹っ飛ばされた。なおも抗議しようと、門の隙間から入ろうとしたカミサマだったが、旧家の神の神力か、見えない壁が出来たかのように門を通り抜けることがかなわなくなっていた。  カミサマは門の外で、夜が明けるまで旧家の神を呼び続けたが、彼が温情をみせることはなかった。
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