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その1
気が付くと薄暗い路地を歩いていた。
「お願いです!妹を助けてください!」
少年の声が聞こえる。声のする方へ近づくと、少年が不気味な鳥に何かを必死に懇願している。
「今日手術があるんです!でもその手術はとっても難しいみたいで……。
そんな時あなたの噂を聞いたんです!どんな願いでも叶えてくれるって!」
少年の願いを聞き、鳥はニヤリと微笑んだ。
「あら、それならば。願いを叶える代わりに、あなたの大事なものを対価に頂くことも聞いてるかしら?」
「大切なもの……」
少年は戸惑い、少し悩んでいたが、
「妹が助かるならばどんなものでも構いません!」
そう力強く返事をした。鳥は不気味な声をあげ、笑った。
「わかった。それじゃ、始めましょうか」
「待て!」
気が付いたら俺は少年を止めていた。二人の視線が俺に注がれる。
「あなたは?もしかしてあなたも願いを叶えてほしいの?」
「そうじゃない。ただその少年があんたに騙されるのは見てられない」
少年は突然の俺の乱入に驚いてるのか、おろおろと俺と鳥を交互に見ている。
「どうせ大切なものとして妹さんの命だとか、そんな要求をするんだろ?」
「そんな悪魔みたいな真似はしないわ。それに代償は必要なのよ」
「なんだと?」
「あなたは世界中の瀕死の人を救うつもり?好き勝手な願いも全て叶えるべき?
私はそうは思わない。だから何を犠牲にしても助けたい、そんな人の願いだけを叶えるの」
俺は返す言葉がなかった。その考えは間違ってないと思った。それに、今の発言を否定するのは覚悟を決めている少年に対しても悪い気がしてしまった。
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